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会長コメント:移籍制限制度趣旨及び制度悪用防止についての改革の方向性について (2018.12.21)

2018年12月21日
一般社団法人日本実業団陸上競技連合
会長 西川晃一郎

移籍制限制度趣旨及び制度悪用防止についての改革の方向性について

昨日NHKから放送された「クローズアップ現代+」において当連合の移籍制限制度についての問題提起がありました。この機会に当連合(「実業団」)の移籍制限制度の趣旨と本制度悪用防止についての改革の方向性につき所感を申し述べます。

 

[移籍制限制度の趣旨]
駅伝チーム同士の選手の「引き抜き行為」が過去にあり、チームと選手を支えていただいている駅伝ファン、すなわち、職場、会社、地域社会、その他多くの駅伝ファンから厳しく非難されたことから実業団は登録規程第6条の移籍制限制度を作りました。
現行規程は「円満移籍者でない者の(実業団)登録申請は無期限で受理しない」という条文になっておりますが、これは全く移籍を認めないということではなく、元のチーム責任者と選手の間で期限を定めず、お互いによく話し合い、時間は多少かかってもお互いのために、円満に解決してほしいとの願いを込めています。期限を設けることにより話し合いが中断され、問題を抱えたまま移籍することにもなりかねないと考えたからです。
実際の運用においても現在の実業団の各チーム間で選手の移籍はこの移籍制限制度に従ってここ2年の実績では女子選手だけでも約20名が移籍しており、この制度についての苦情は実業団に寄せられていません。
実業団は、移籍制限規程を撤廃することによりカネにモノを言わせた引き抜きが行われ、一部のチームに強い選手が集中し、チーム対抗駅伝競走大会の魅力が低下し、駅伝ファンが離反し、延いては駅伝競走大会の衰退、駅伝チームの衰退につながると考えています。 日本陸上界が世界から羨望されている特色の一つとしてマラソンを始めとする長距離選手の多くが駅伝チームという安定した基盤の上で競技活動が行えることがあります。 彼らの活動基盤の衰退は日本陸上長距離界にとって大きな損失にもつながります。

 

[制度悪用防止についての改革の方向性について]
2020年東京オリンピックを控えアスリート・ファーストということが世の中に言われ始めました。現在の移籍制限制度を悪用すればアスリートに対するパワハラ行為にもつながりかねないことを実業団はすでに認識しており、移籍制限制度を悪用したパワハラ行為は厳しく制裁されるべき禁止行為であると考えております。また、これから新たに実業団に入ってこようとする選手やチームにも移籍制限制度のことをよく理解してもらう必要性を感じています。
ファン・ファーストとアスリート・ファーストを、対立的に考えるのではなくファンとアスリートの双方があって実業団(企業スポーツ)が成立っている現実から、実業団はどちらも重要と考えています。 移籍制限制度についても自らの競技力向上のため「指導者を求めて」移籍希望を申し出た選手をパワハラから守るアスリート・ファーストの視点とファンを無視し「カネにモノを言わせた引き抜き」を許さないファン・ファーストの視点の双方から現在の移籍制限制度を見直し、改革することが必要ではないかと考えています。
本件は容易に結論の出る問題とは思っておりませんが、実業団の役割はファンとアスリートをつなぐことがその重要な役割と考えておりますので、広く駅伝ファンの皆様、選手、チームの皆様のご意見を伺い、真摯に検討を始めたいと考えております。

 

移籍制限制度趣旨及び制度悪用防止についての改革の方向性について

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